「精神科の看護師って、どんな仕事をしているんだろう」 「精神科は病むって聞くけど、本当?」
精神科への転職を考えたとき、仕事内容のイメージがわかなかったり、ネットの評判を見て不安になったりする人もいるのではないでしょうか。精神科は、一般の診療科とは看護の中心になるものが少し違う分野です。
この記事では、精神科看護師について次のことをまとめました。
- 精神科看護師の仕事内容と役割
- 一般診療科との違いと、働く場所
- 「病む」「レベル低い」と言われる理由と実際
- 向いている人・向いていない人
- キャリアアップにつながる資格と、転職で確認したいこと
病院で14年ほど看護師として働いてきた立場から、精神科を選ぶか迷っている人が判断しやすいように整理しています。
精神科看護師とは
精神科看護師とは、統合失調症やうつ病、双極性障害、認知症、依存症など、こころの病気をもつ人の看護を担当する看護師のことです。特別な免許があるわけではなく、看護師(准看護師)の免許があれば精神科で働けます。
病気の症状だけでなく、生活のしづらさや人との関わり方にも目を向けて、その人が自分らしく暮らせるように支えるのが精神科看護の大きな特徴です。
一般診療科との違い
一般の診療科と精神科のおもな違いをまとめると、次のようになります。
| 項目 | 一般診療科(急性期病棟など) | 精神科 |
|---|---|---|
| 入院期間 | 比較的短い | 長くなりやすい |
| 看護の中心 | 処置・検査・急変への対応 | 日常生活の援助、コミュニケーション、服薬支援 |
| 医療処置 | 点滴や創傷処置などが多い | 病棟によって少なめなことが多い |
| 観察のポイント | バイタルサインや検査データ | 表情や言動、睡眠、食事など生活の変化 |
厚生労働省の「病院報告」によると、令和4年の平均在院日数は病院全体で27.3日、一般病床で16.2日でした。これに対して精神病床は276.7日と、ほかの病床に比べて大幅に長くなっています。患者さんと長い期間をかけて関係をつくっていく点が、精神科ならではの働き方につながっています。
精神科看護師の仕事内容と役割
精神科看護師のおもな仕事は、次のとおりです。
- 日常生活の援助:食事や入浴、睡眠、身だしなみなど、セルフケアが難しくなっている部分を支える
- 観察とコミュニケーション:会話や表情、行動の変化から、症状の悪化や再発のサインに気づく
- 服薬の支援:薬の管理や与薬、副作用の観察、自分で服薬を続けられるようにする支援
- 安全の確保:自分や他人を傷つけるおそれがあるときの対応や、行動制限中の観察
- 身体面のケア:高齢の患者さんの持病の管理や、薬の副作用による体の変化への対応
- 退院支援と家族支援:退院後の生活に向けた練習や、家族からの相談への対応
隔離や身体的拘束などの行動制限は、精神保健福祉法にもとづいて医師が判断します。看護師は、行動制限中の患者さんの状態をこまめに観察し、できるだけ早く制限を解除できるように医師やチームと情報を共有する役割を担います。
精神科では、医師や精神保健福祉士、作業療法士、公認心理師など、多職種で患者さんを支えるのが基本です。看護師は患者さんと過ごす時間がいちばん長い職種なので、日々の小さな変化をチームに伝える役割が大切になります。
精神科看護師が働くおもな場所
精神科看護師の職場は、精神科病院だけではありません。
| 職場 | 特徴 |
|---|---|
| 精神科病院・総合病院の精神科病棟 | 急性期から慢性期、認知症治療病棟など、病棟ごとに役割が分かれている |
| 精神科・心療内科クリニック | 外来が中心で、日勤のみの求人が多い。デイケアを併設しているところもある |
| 精神科訪問看護 | 自宅で暮らす患者さんを訪問し、服薬や生活リズム、再発のサインを確認する |
| デイケア・就労支援など | 通所の場で、生活リズムづくりや社会復帰に向けた支援を行う |
同じ精神科でも、救急や急性期の病棟と、長期療養の病棟では忙しさも求められる力も大きく違います。自宅で暮らす人を支える精神科訪問看護も、地域で働きたい人に人気の選択肢です。
関連記事:訪問看護師とは?仕事内容・役割・給料、病棟との違いと「やってはいけないこと」も解説
精神科看護師の1日の流れ
病棟によって違いはありますが、日勤のおおまかな流れを紹介します。
| 時間 | おもな業務 |
|---|---|
| 8:30 | 申し送り、患者さんの状態の確認 |
| 9:00 | 検温・観察、服薬の確認、入浴や身の回りの援助 |
| 11:30 | 配膳、食事の見守り、昼の与薬 |
| 13:00 | 作業療法やレクリエーションへの付き添い、面談、記録 |
| 15:00 | カンファレンス、退院支援の調整 |
| 16:30 | 記録、夜勤への申し送り |
食事や服薬、レクリエーションなど、患者さんの生活に寄り添う時間が多いのが特徴です。夜勤では、眠れない患者さんへの声かけや巡視、早朝の不穏への対応などを行います。
精神科看護師は「病む」「きつい」と言われる理由
精神科看護師について調べると、「病む」「きつい」という言葉を目にすることがあります。その背景として考えられる理由は、次のとおりです。
- 患者さんから強い言葉を向けられたり、暴力のリスクがあったりする
- 症状の波があり、関わっても改善が見えにくい時期がある
- 患者さんの気持ちに寄り添うほど、自分の感情も揺れやすい
- 退院してもまた入院してくるなど、無力感を覚える場面がある
こうした大変さは、ひとりで抱え込むと大きな負担になります。一方で、チームで情報を共有し、カンファレンスや先輩への相談で気持ちを整理できる職場なら、負担はかなり違ってくるでしょう。
応募前には、暴力や暴言があったときの対応ルール、相談できる体制、新人や中途入職者への教育の有無を確認しておくと安心です。心身の疲れがたまっているときの考え方は、次の記事でもまとめています。
関連記事:看護師の仕事に疲れたときの対処法、原因別の休み方と働き方の変え方
精神科看護師は「レベル低い」って本当?
「精神科看護師はレベルが低い」と言われることがありますが、これは医療処置の頻度だけを見たイメージだと考えられます。精神科では点滴や処置が少ない病棟もあるため、急性期の技術から離れることに不安を感じる人もいるでしょう。
ただ、精神科で求められるのは、言葉にならないサインに気づく観察力や、患者さんとの信頼関係をつくるコミュニケーション力です。症状の悪化や身体疾患の見逃しを防ぐには、高いアセスメント力が欠かせません。
いずれ一般診療科に戻る可能性があるなら、身体合併症を受け入れている病院を選んだり、研修で採血や救急対応の技術を維持したりする方法もあります。
精神科看護師に向いている人・向いていない人
向いている人
- 患者さんとじっくり関わり、長い目で変化を見守れる人
- 話をよく聞き、相手の気持ちを想像できる人
- うまくいかない日があっても、気持ちを切り替えられる人
- チームで相談しながら進めるのが苦にならない人
- 急性期のスピード感より、生活に寄り添う看護をしたい人
向いていないと感じやすい人
- 処置や手技を磨くことにやりがいを感じる人
- すぐに目に見える成果がほしい人
- 相手の言葉を自分への攻撃として受け止めやすい人
ただし、向き不向きは働いてみてわかる部分も大きいものです。最初から決めつけず、見学で病棟の雰囲気を見たり、クリニックや訪問看護など関わり方の違う職場を比べたりしてみてください。
精神科看護師のキャリアアップにつながる資格
精神科で経験を積んだあとのキャリアアップには、次のような資格があります。
| 資格 | 認定する団体 | 概要 |
|---|---|---|
| 精神科認定看護師 | 日本精神科看護協会 | 教育課程を修了し、認定審査に合格した看護師。質の高い精神科看護の実践や相談、指導を担う |
| 精神看護専門看護師 | 日本看護協会 | 大学院修士課程で専門分野を学び、認定審査に合格した看護師。複雑な問題をもつ患者さんへの看護や、スタッフへの相談などを担う |
日本精神科看護協会によると、精神科認定看護師制度は2025年度に改正され、オンデマンド配信やライブ配信、集合研修を組み合わせて学べるようになりました。受講資格や費用は年度によって変わることがあるため、最新の募集要項を確認しましょう。ほかの資格については、次の記事でもまとめています。
関連記事:看護師におすすめの資格、続ける人向け・看護師以外も考える人向けに分けて紹介
精神科への転職で確認しておきたいこと
精神科は、病院や病棟によって働き方が大きく変わります。応募前に、次の点を求人や見学で確かめておくのがおすすめです。
- どの病棟に配属されるか(急性期、慢性期、認知症治療病棟など)
- 夜勤の人数と、1人あたりの受け持ち患者数
- 暴力や暴言があったときの対応ルールと、相談できる体制
- 身体合併症の受け入れや、医療処置の頻度
- 中途入職者への教育やフォローの内容
面接では、精神科を選んだ理由や、患者さんとの関わりで大切にしたいことを聞かれやすいでしょう。答え方の準備には、次の記事も参考にしてください。
関連記事:看護師の転職面接でよく聞かれる質問と回答例、逆質問・服装・マナーと「落ちるサイン」の考え方
精神科看護師についてよくある質問
Q. 精神科看護師になるのに特別な資格は必要ですか? A. 必要ありません。看護師または准看護師の免許があれば、精神科の病院やクリニックに応募できます。精神科認定看護師などの資格は、働きながら経験を積んでから目指すものです。
Q. 精神科は未経験でも転職できますか? A. 未経験から精神科に転職する看護師は少なくありません。一般診療科で身につけた身体面のアセスメントは、高齢の患者さんや身体合併症のある人の看護で役立ちます。教育体制のある職場を選ぶと、不安を減らせるでしょう。
Q. 精神科は夜勤が楽って本当ですか? A. 病棟によって違います。落ち着いた慢性期の病棟もあれば、急性期で入院や不穏への対応が多い病棟もあります。夜勤の人数や受け持ち人数を確認してから判断してください。
Q. 精神科の看護師は男性が多いのですか? A. ほかの診療科に比べると、男性看護師が活躍している印象が強い分野です。とはいえ、女性看護師も多く働いており、性別に関係なくチームで役割を分担しています。
まとめ
精神科看護師は、こころの病気をもつ人の生活に寄り添い、長い時間をかけて回復を支える看護師です。処置よりも観察やコミュニケーションが中心になるため、一般診療科とはやりがいの感じ方も変わってきます。
「病む」「レベル低い」といった評判だけで判断せず、どの病棟でどんな看護をしたいのかを考えてみてください。見学や求人の確認を重ねれば、自分に合う職場がきっと見つかります。