「保健師と看護師って、何が違うの?」 「看護師として働いているけれど、保健師の資格も取るべき?」
どちらも人の健康を支える仕事ですが、役割や働く場所、資格の取り方には大きな違いがあります。進路に迷っている学生さんだけでなく、看護師から保健師への転職を考えている人にとっても、気になるところでしょう。
この記事では、保健師と看護師の違いを、法律の定義や資格の取り方、仕事内容、働き方の面から整理します。
- 保健師と看護師の役割の違い(法律での定義)
- 資格の取り方と、国家試験の違い
- 仕事内容・職場・働き方の違い
- 給料はどちらが高い?「どっちがいい」の考え方
- 看護師から保健師を目指す方法
保健師と看護師の違いを一覧で比較
まずは、主な違いを表で確認しておきましょう。
| 項目 | 保健師 | 看護師 |
|---|---|---|
| 役割の中心 | 病気の予防と健康づくり(保健指導) | 病気やけがのある人の療養上の世話と診療の補助 |
| 関わる相手 | 地域の住民、企業の社員、学校の子どもなど、主に健康な人を含む集団 | 主に病気やけがのある患者さん |
| 必要な国家試験 | 保健師国家試験と看護師国家試験の両方 | 看護師国家試験 |
| 主な職場 | 保健所・市区町村、企業、学校、地域包括支援センターなど | 病院、クリニック、訪問看護、介護施設など |
| 勤務 | 日勤が中心 | 病棟では夜勤やシフト勤務がある |
| 求人の数 | 少ない | 多い |
法律で見る役割の違い
保健師と看護師の役割は、「保健師助産師看護師法」で定められています。
| 資格 | 法律での定義(要旨) |
|---|---|
| 保健師 | 厚生労働大臣の免許を受けて、保健師の名称を用いて、保健指導に従事することを業とする者(第2条) |
| 看護師 | 厚生労働大臣の免許を受けて、傷病者などに対する療養上の世話または診療の補助を行うことを業とする者(第5条) |
つまり、看護師が病気やけがのある人へのケアを担うのに対し、保健師は保健指導を通して、病気を防ぎ健康を保つことを担う専門職です。
また、保健師でない人が保健師やそれに似た名称を使って保健指導を行うことは、法律で禁止されています(第29条)。保健師も、病気の人に療養上の指導をするときに主治医がいる場合は、その指示を受ける必要があります(第35条)。
資格の取り方の違い
保健師になるには、保健師国家試験と看護師国家試験の両方に合格する必要があります(保健師助産師看護師法第7条)。看護師の資格が土台になっているため、看護師資格がないまま保健師だけになることはできません。
保健師国家試験を受けるには、国が指定した学校で1年以上、保健師に必要な学科を学ぶか、指定された養成所を卒業する必要があります(同法第19条)。主なルートは次のとおりです。
| ルート | 内容 |
|---|---|
| 保健師課程のある看護系大学 | 4年間で看護師と保健師の受験資格を得る。ただし、大学によっては保健師課程が選択制で、定員が限られていることもある |
| 看護師になってから養成機関へ | 看護専門学校や、保健師課程のない大学を卒業したあと、保健師養成所や大学の専攻科などで1年以上学ぶ |
| 大学院 | 看護師の資格を得たあと、保健師の教育課程がある大学院で学ぶ |
看護師として働きながら保健師を目指す場合も、養成機関で1年以上学ぶ必要があるため、仕事との両立や学費の準備を考えておく必要があるでしょう。
仕事内容と職場の違い
保健師の主な職場と仕事
| 職場 | 主な仕事 |
|---|---|
| 保健所・市区町村(行政保健師) | 乳幼児健診や妊産婦の相談、生活習慣病の予防、感染症対策、地域の健康づくりの企画 |
| 企業(産業保健師) | 社員の健康診断の事後フォロー、保健指導、メンタルヘルス対策、健康施策の企画 |
| 学校 | 児童・生徒や学生の健康管理、健康相談(養護教諭として働く場合は別の免許の手続きが必要) |
| 地域包括支援センター | 高齢者の介護予防、健康や介護の相談 |
保健師の仕事は、一人ひとりへの保健指導に加えて、地域や組織全体の健康課題を見つけて対策を考えることが大きな特徴です。データを集めて分析したり、事業を企画したりする力も求められます。
看護師の主な職場と仕事
看護師は、病院の病棟や外来、クリニック、訪問看護ステーション、介護施設など、幅広い職場で働けます。患者さんの状態を観察し、医師の指示にもとづく処置や、日常生活の援助を行うのが主な仕事です。
企業の健康管理室のように、看護師が保健師と近い仕事をする職場もあります。企業で働く看護師については、次の記事が参考になるでしょう。
関連記事:企業看護師とは?仕事内容・年収・なるには|元看護師がメリット・デメリットも解説
給料はどちらが高い?
「保健師と看護師、どっちが稼げる?」という疑問はとても多く見られます。結論からいうと、働く場所や夜勤の有無によって変わるため、一概にはいえません。
- 看護師は夜勤手当で収入が増えやすい:病棟で夜勤に入る看護師は、夜勤手当の分だけ月収が高くなることがあります
- 行政保健師は公務員の給与体系:市区町村や保健所で働く保健師は地方公務員として、自治体の給与表にもとづいて給与が決まります。昇給や賞与の仕組みが安定しているのが特徴です
- 企業の保健師は企業ごとに違う:企業の給与体系で決まるため、大手企業では待遇がよいこともあります
目先の月収だけでなく、夜勤の有無や働き方、長く続けられるかどうかも含めて比べることが大切です。夜勤をやめたときの収入の変化は、こちらの記事で詳しくまとめています。
関連記事:看護師が夜勤なしで働くと年収はどう変わる?夜勤手当の差と日勤のみの職場
保健師と看護師、どっちがいい?
「どちらが上」という上下関係はありません。保健師は看護師の資格を土台にした資格ですが、求められる専門性が違うだけで、どちらが優れているというものではないと考えましょう。
どちらが自分に合うかは、次のような点から考えるのがおすすめです。
| こんな人は | 向いている方向 |
|---|---|
| 目の前の患者さんに直接ケアをしたい | 看護師 |
| 急性期の現場で、技術や判断力を磨きたい | 看護師 |
| 病気になる前の予防や、健康づくりに関わりたい | 保健師 |
| 地域や組織全体を見て、仕組みづくりに関わりたい | 保健師 |
| 夜勤のない働き方で長く続けたい | 保健師(看護師でも日勤のみの職場はある) |
| 求人の多さや、働く場所の選びやすさを重視したい | 看護師 |
保健師は求人が少なく、特に行政保健師は自治体の採用試験に合格する必要があります。一方で看護師は職場の選択肢が多く、転職もしやすいでしょう。「どちらがいいか」は、やりたいことと働き方の希望を照らし合わせて決めるのが一番です。
看護師から保健師を目指すには
看護師として働いている人が保健師を目指す場合は、次のような流れになります。
- 保健師になりたい理由を整理する:行政・企業・学校など、どの分野で働きたいかによって準備が変わります
- 養成機関を選ぶ:保健師養成所や、大学の専攻科・大学院などで1年以上学ぶ必要があります
- 学費と生活の準備をする:通学中は仕事を減らしたり休職したりすることになるため、費用や家計の見通しを立てます
- 保健師国家試験に合格する:合格後、免許の申請をして保健師として働けるようになります
- 就職先を探す:行政保健師は自治体の採用試験、企業の保健師は求人への応募が一般的です
保健師の資格は、企業の健康管理室で働くときにも強みになります。また、保健師免許があれば、試験を受けずに第一種衛生管理者の免許を申請できる点もメリットの一つです。
看護師が取れる資格をほかにも知りたい人は、次の記事も参考にしてください。
関連記事:看護師におすすめの資格|続ける人向け・看護師以外も考える人向けに分けて紹介
よくある質問
Q. 看護師の資格がなくても保健師になれますか? A. なれません。保健師になるには、保健師国家試験と看護師国家試験の両方に合格し、厚生労働大臣の免許を受ける必要があります。
Q. 保健師と看護師では、どちらの試験が難しいですか? A. 出題される内容が違うため、単純には比べられません。保健師の試験は公衆衛生看護や疫学・保健統計など、予防や地域の健康に関する内容が中心です。看護師の試験に合格したうえで受ける資格なので、学ぶ範囲は広いといえます。
Q. 看護師として働きながら保健師になれますか? A. 保健師国家試験の受験資格を得るには、指定された学校や養成所で1年以上学ぶことが必要です。仕事を続ける場合は、勤務先と相談して働き方を調整しながら通学することになるでしょう。
Q. 保健師の資格があれば看護師として働けますか? A. 保健師は看護師国家試験にも合格していることが前提なので、看護師の免許を持っていれば看護師として働けます。病院の求人に応募する場合は、看護師としての臨床経験を求められることもあります。
Q. 保健師は夜勤がありますか? A. 行政や企業、学校で働く保健師は日勤が中心で、夜勤はほとんどありません。ただし、災害時や感染症の流行時など、時間外の対応が必要になることもあります。
まとめ
- 保健師は保健指導を通して病気の予防と健康づくりを担い、看護師は療養上の世話と診療の補助を担う
- 保健師になるには、保健師と看護師の両方の国家試験に合格する必要がある
- 保健師は行政・企業・学校などで日勤中心に働き、看護師は病院を中心に幅広い職場で働ける
- 給料はどちらが高いとは一概にいえず、夜勤の有無や働く場所で変わる
- どちらがいいかは、やりたいことと働き方の希望で考えるのがおすすめ
保健師と看護師は、どちらも人の健康を支える大切な仕事です。自分がどんな形で人と関わりたいのかを考えながら、進む道を選んでみてください。
