「常勤はしんどいけれど、看護師の仕事は続けたい」 「派遣って時給が高いと聞くけど、デメリットはないの?」
働き方を見直したいときに、選択肢の一つとして気になるのが「派遣」という働き方です。
わたしは新卒から約14年、同じ病院で常勤として働きました。派遣で働いた経験はありませんが、辞めてみて「1つの病院しか知らず、そこが全てだった」と気づきました。いろいろな職場を知る方法として、派遣という働き方があることは、看護師の皆さんに知っておいてほしいと思っています。
この記事では、看護師が派遣で働くメリット・デメリットを中心に、派遣の仕組みと種類、派遣で働ける職場と法律上のルール、常勤・パートとの違い、向いている人、派遣会社を選ぶときの確認ポイントをまとめました。
先に結論をお伝えすると、派遣は「働く日や時間を選びやすい」「人間関係を割り切りやすい」というメリットがある一方で、「ボーナスや昇給がないことが多い」「契約期間が終われば仕事も終了する」というデメリットがあります。また、病院やクリニックへの看護師の派遣は原則禁止されているので、働ける職場が限られる点も知っておきましょう。
派遣看護師とは?働く仕組み
派遣看護師とは、派遣会社に登録して、派遣会社と雇用契約を結び、派遣先の施設で働く看護師のことです。
| 項目 | 派遣の場合 |
|---|---|
| 雇用契約を結ぶ相手 | 派遣会社 |
| 給与の支払い元 | 派遣会社 |
| 仕事の指示を出す人 | 派遣先のスタッフ |
| 困ったときの相談先 | 派遣会社の担当者 |
職場で働くのは派遣先ですが、雇い主は派遣会社です。勤務条件の相談やトラブルがあったときは、派遣会社の担当者に相談します。
派遣の主な種類
| 種類 | 特徴 |
|---|---|
| 登録型派遣 | 派遣会社に登録し、仕事が決まったときに、その期間だけ派遣会社と雇用契約を結ぶ |
| 常用型派遣(無期雇用派遣) | 派遣会社に期間の定めなく雇用され、派遣先で働く |
| 紹介予定派遣 | 派遣期間のあとに、派遣先での直接雇用を前提として働く |
紹介予定派遣は、実際に働いてみてから、その職場に正式に就職するかどうかを決められる働き方です。転職を考えているけれど、職場の雰囲気が合うか不安な人にとっては、選択肢の一つになります。
看護師が派遣で働ける職場と、病院での原則禁止
看護師の派遣を考えるときに、まず知っておきたいのが法律上のルールです。
病院・クリニックへの派遣は原則禁止
労働者派遣法と施行令では、病院や診療所(クリニック)などでの医療関係の業務は、原則として派遣ができない業務とされています。
ただし、次のような場合は例外として派遣が認められています。
| 例外 | 内容 |
|---|---|
| 紹介予定派遣 | 派遣先での直接雇用を前提とする派遣 |
| 休業する職員の代わり | 産前産後休業・育児休業・介護休業を取る職員の業務を代わりに行う派遣 |
| へき地の医療機関 | へき地にある病院等での看護師の派遣 |
※出典:e-Gov法令検索「労働者派遣法施行令」第2条、e-Gov法令検索「労働者派遣法」第4条・第40条の2
派遣で働きやすい職場
病院・クリニック以外の、介護施設や福祉施設などでは、看護師の派遣の求人を見かけることがあります。
- デイサービスなどの通所施設
- 特別養護老人ホームなどの介護施設
- 訪問入浴
- 保育園
- 健診(健康診断)
- 企業や学校などの健康管理
働ける職場や業務の範囲は、雇用期間や働く場所によっても変わります。1日や数日だけの単発の派遣には、別のルール(日雇派遣の原則禁止と例外)があります。詳しくはこちらの記事にまとめています。
関連記事:看護師の単発派遣とは?禁止の例外・働ける職場と単発バイトとの違い
求人を見て判断に迷うときは、派遣会社に「この求人はどの形で働くのか」を確認しましょう。
看護師が派遣で働くメリット
1. 働く日や勤務時間を選びやすい
派遣では、働く曜日や勤務時間、期間などの希望を伝えたうえで仕事を探せます。子育てや介護、学びの時間など、プライベートと仕事の両立を考えたい人にとって大きな魅力です。
2. 時給制で、働いた分が収入になる
派遣の給与は時給制が一般的です。求人によっては、パートの時給と比べて高めに設定されていることがあります。残業をした場合は、その分の給与が支払われます。
3. 人間関係を割り切りやすい
派遣は契約期間が決まっているため、職場の人間関係を深く抱え込みにくい面があります。委員会活動や係の仕事など、業務以外の役割を担当しないことが多いのも特徴です。
4. いろいろな職場を経験できる
派遣では、契約ごとに違う施設で働くことができます。病棟しか知らない人が、介護施設や健診など別の分野を経験することで、自分に合う職場や働き方を見つけるきっかけになります。
わたしは辞めてから「世間知らずだった」と気づきました。働きながら外の職場を知る方法があるのは、キャリアを考えるうえで心強いことだと思います。
5. 条件の交渉や相談を派遣会社に任せられる
勤務条件の交渉や、職場で困ったことの相談は、派遣会社の担当者が間に入ってくれます。自分では言いにくいことを伝えてもらえるのは、安心できるポイントです。
6. 直接雇用につながる道もある
紹介予定派遣なら、実際に働いてから正式に就職するかどうかを決められます。入職してから「こんなはずではなかった」となるのを防ぎやすい働き方です。
看護師が派遣で働くデメリット
1. ボーナスや昇給がないことが多い
派遣は時給制が一般的で、常勤のようなボーナス(賞与)や定期的な昇給、退職金がないことが多くなります。時給が高めでも、年収で比べると常勤より低くなる場合があります。
2. 契約期間が終われば仕事も終了する
派遣は契約期間が決まっていて、期間が終われば、その職場での仕事も終了します。更新されない場合は、次の仕事を探す必要があり、収入が途切れる可能性があります。
また、労働者派遣法では、同じ派遣労働者が派遣先の同じ組織単位(課など)で働ける期間は、原則として3年までとされています(無期雇用派遣など、例外もあります)。
※出典:e-Gov法令検索「労働者派遣法」第35条の3
3. 職場になじみにくいことがある
短い期間で働くため、職場の輪に入りにくい、疎外感を感じるという声もあります。毎回新しい職場のルールや物品の場所を覚える必要もあります。
4. 研修や教育が少ないことがある
派遣看護師は、これまでの経験やスキルを活かす即戦力として期待されることが多く、入職後の研修や教育が十分でない場合があります。経験の少ない分野で働くときは、事前に業務の範囲を確認しておきましょう。
5. キャリアアップにつながりにくいことがある
リーダー業務や管理職、認定看護師などの資格取得の支援といった、長期的なキャリアアップの機会は、常勤のほうが得やすい傾向があります。
常勤・パート・派遣の違い
働き方を選ぶときは、3つの違いを比べてみると整理しやすくなります。
| 項目 | 常勤(正職員) | パート | 派遣 |
|---|---|---|---|
| 雇い主 | 働く病院・施設 | 働く病院・施設 | 派遣会社 |
| 給与 | 月給制が多い | 時給制が多い | 時給制が多い |
| ボーナス・昇給 | あることが多い | 職場による | ないことが多い |
| 働く期間 | 期間の定めがないことが多い | 職場による | 契約期間が決まっている |
| 働く日・時間 | 職場のシフトに合わせる | 相談しやすい | 希望に合う仕事を選ぶ |
| 働ける職場 | 病院・クリニックも含め幅広い | 病院・クリニックも含め幅広い | 病院等は原則不可(例外あり) |
| 相談先 | 職場の上司 | 職場の上司 | 派遣会社の担当者 |
「働く時間を減らしたい」「病院で働き続けたい」という人は、パートのほうが合う場合もあります。夜勤のない働き方を考えているなら、こちらの記事も参考にしてください。
関連記事:看護師が夜勤なしで働くと年収はどう変わる?夜勤手当の差と日勤のみの職場
派遣で働くのが向いている看護師・向いていない看護師
向いている人
- 子育てや介護、学びなど、働く日や時間を自分で決めたい人
- 一定の期間だけ働きたい人
- 職場の人間関係に疲れていて、少し距離を置きたい人
- いろいろな職場を経験して、自分に合う働き方を探したい人
- 転職先の雰囲気を、実際に働いて確かめたい人(紹介予定派遣)
向いていない人
- ボーナスや昇給など、長期的に安定した収入を重視したい人
- 同じ職場で長く働きたい人
- 病院で専門性を深めたい、リーダーや管理職を目指したい人
- 経験の少ない分野で、しっかり教育を受けながら働きたい人
職場の人間関係がつらくて派遣を考えている場合は、まずは心と体を休めることも大切です。眠れない、食欲がないなどの状態が続くときは、医療機関に相談してください。
関連記事:看護師の仕事に疲れたときの対処法|原因別の休み方と働き方の変え方
派遣会社を選ぶときと、働く前の確認ポイント
派遣会社を選ぶポイント
- 看護師の求人を扱っているか、自分の地域に求人があるか
- 希望する働き方(長期・短期、紹介予定派遣など)の求人があるか
- 担当者が、こちらの希望や不安をきちんと聞いてくれるか
- 職場で困ったときに、相談できる体制があるか
労働者派遣事業を行うには、厚生労働大臣の許可が必要です(労働者派遣法第5条)。登録する前に、公式サイトで許可番号などの会社の情報を確認しておきましょう。
働く前に確認したいこと
| 確認項目 | 確認するポイント |
|---|---|
| 仕事内容・業務の範囲 | どんな業務を担当するか、医療処置はどこまでか |
| 時給・交通費 | 時給、残業代、交通費の支給の有無 |
| 勤務時間・休日 | 勤務時間、休憩、休日、残業の見込み |
| 契約期間 | いつからいつまでか、更新の可能性はあるか |
| 社会保険・福利厚生 | 社会保険の加入条件に当てはまるか、有給休暇の扱い |
| 相談先 | トラブルや体調不良のときに連絡する担当者 |
社会保険の加入は、働く時間や契約期間などの条件によって決まります。自分が対象になるかどうかは、派遣会社に確認しましょう。
派遣でも待遇のルールがある
派遣で働く人の待遇については、「同一労働同一賃金」のルールがあります。派遣会社には、派遣先の正社員などとの均等・均衡を図る方式か、労使協定による方式のいずれかで、派遣労働者の待遇を確保することが義務づけられています。
※出典:厚生労働省「派遣労働者の同一労働同一賃金について」(2026年11月閲覧。制度の改正も案内されているので、最新の情報はページで確認してください)
待遇に疑問があるときは、まず派遣会社に確認し、解決しない場合は都道府県労働局や総合労働相談コーナーに相談できます。
よくある質問
Q. 看護師がずっと派遣で働くのはありですか? A. 働き方は人それぞれなので、自分の生活や希望に合っていれば選択肢の一つです。ただし、契約期間の終了やボーナスがないことによる収入の変動があるので、長期的なお金の見通しは立てておきましょう。
Q. 看護師は派遣のほうが稼げますか? A. 時給だけを見ると高めの求人もありますが、ボーナスや昇給、退職金がないことが多いため、年収で比べると常勤のほうが多くなる場合があります。時給だけでなく、働ける日数や手当も含めて比べることが大切です。
Q. 看護師の派遣とパートの違いは何ですか? A. いちばん大きな違いは雇い主です。パートは働く病院や施設と直接雇用契約を結び、派遣は派遣会社と雇用契約を結びます。また、病院やクリニックではパートとして働けますが、派遣は原則として禁止されています(紹介予定派遣などの例外を除く)。
Q. 派遣看護師は、契約の途中で辞められますか? A. 契約期間の途中で辞めることは、原則として難しいと考えておきましょう。体調不良などやむを得ない事情があるときは、まず派遣会社の担当者に相談してください。
Q. 紹介予定派遣のメリットは何ですか? A. 実際に働いて職場の雰囲気や仕事内容を確かめてから、正式に就職するかどうかを決められることです。派遣先にとっても、働きぶりを見てから採用を決められるという面があります。
まとめ
- 派遣看護師は、派遣会社と雇用契約を結び、派遣先の施設で働く
- メリットは、働く日や時間を選びやすい、人間関係を割り切りやすい、いろいろな職場を経験できること
- デメリットは、ボーナスや昇給がないことが多い、契約期間が終われば仕事も終了すること
- 病院・クリニックへの看護師の派遣は原則禁止で、紹介予定派遣や休業する職員の代わりなどが例外
- 働く前に、業務の範囲・時給・契約期間・社会保険を確認する
派遣は、看護師を続けながら働き方を変えるための選択肢の一つです。今の職場を辞めるか迷っているなら、ほかの選択肢もあわせて比べてみてください。