「師長に退職理由をどう伝えればいいんだろう」 「面接で前の職場を辞めた理由を聞かれたら、なんて答えよう」
辞めると決めたあとも、看護師の退職理由をどう話すかで手が止まる人は多いと思います。
わたしは新卒から約14年、同じ病院で看護師として働き、2024年12月に退職しました。師長に伝えた退職理由は、言い換えをせず、本音のままです。
この記事では、看護師の退職理由を「師長への相談」「退職届」「転職先の面接」の3つの場面で書き分ける方法と、理由別の例文をまとめました。
先に結論を書くと、ポイントは次の3つです。
- 退職届は「一身上の都合」でよい。細かい理由は書かない
- 師長には、うそをつかず、引き止めの材料になりにくい形で伝える
- 面接では、不満ではなく「次の職場で何をしたいか」につなげて話す
看護師の退職理由で多いものは?データで確認
まず、看護師がどんな理由で職場を辞めているのかを見ておきます。
厚生労働省の白書では、看護職以外で働いている人や、いまは仕事をしていない求職者(看護経験あり)に、以前の職場を退職した理由をたずねたデータが紹介されています。全体の上位5つは次のとおりです。
| 順位 | 退職理由 | 割合 |
|---|---|---|
| 1位 | 結婚 | 11.9% |
| 2位 | 妊娠・出産 | 9.1% |
| 3位 | 転居 | 9.0% |
| 4位 | 子育て | 8.3% |
| 5位 | 自分の健康(主に身体的理由) | 6.9% |
同じデータの20代では、3位が「自分の健康(主に精神的理由)」で10.8%でした。ほかにも「勤務時間が長い・超過勤務が多い」「夜勤の負担が大きい」「責任の重さ・医療事故への不安」などが上位10位に入っています。
※出典:厚生労働省『令和4年版厚生労働白書 図表1-2-23 看護職員の以前の職場を退職した理由』(資料:日本看護協会中央ナースセンター「2019年度ナースセンター登録データに基づく看護職の求人・求職・就職に関する分析報告書」)
結婚や出産、子育てといった家庭の事情が上位に並ぶ一方で、上司との関係や残業、夜勤の負担といった職場の環境に関わる理由もあります。実際には、いくつかの理由が重なって退職を決める人が多いのではないでしょうか。
辞めるかどうかをまだ迷っている段階なら、先に理由を整理しておくと、伝え方も決めやすくなります。
関連記事:看護師を辞めたい人へ|14年働いた元看護師が「続ける・辞める」の判断軸を解説
退職理由は「誰に伝えるか」で書き分ける
退職理由は、伝える相手によって役割が違います。同じ内容をどこでも話す必要はありません。
| 場面 | 相手 | 伝える内容 | 詳しさ |
|---|---|---|---|
| 退職の相談 | 師長(直属の上司) | 辞めたい理由と希望の退職日 | 口頭で、ある程度具体的に |
| 退職届・退職願 | 院長(宛名) | 「一身上の都合」 | 一文でよい |
| 転職先の面接 | 採用担当者・看護部長など | 退職理由と、次の職場でやりたいこと | 前向きに、簡潔に |
| 履歴書・職務経歴書 | 採用担当者 | 「一身上の都合により退職」 | 一文でよい |
退職届に書く理由は「一身上の都合」で足りる
自分の希望で辞める場合、退職届の理由は「一身上の都合により」で十分です。人間関係や待遇への不満、家庭の事情を細かく書く必要はありません。
退職届のテンプレートや渡すタイミングは、別の記事で詳しくまとめています。
関連記事:看護師の退職届の書き方|テンプレートと渡し方、円満に辞める手順
師長と面接では「話す目的」が違う
師長に伝えるのは、退職を受け入れてもらい、退職日を決めるためです。面接で話すのは、採用担当者に「この人ならうちで長く働いてくれそう」と判断してもらうためです。
目的が違うので、同じ本音でも話す順番や言葉の選び方を変えると、伝わりやすくなります。
師長に退職理由を伝えるときのポイント
退職の意思は、まず直属の上司である師長に伝えます。病棟のスタッフや同僚に先に話すと、師長が人づてに知ることになり、話がこじれやすくなります。
伝え方の4つのポイント
- 「相談」ではなく「決めたこと」として話す:「辞めようか迷っていて」と始めると、引き止めの話し合いになりやすくなります
- 理由は1〜2つにしぼる:あれもこれも話すと、一つずつ「それなら改善するから」と返されがちです
- 職場や人への不満を中心にしない:事実として伝えるのはよいですが、責める言い方は避けます
- 希望の退職日をはっきり伝える:時期を決めておくと、引き継ぎや勤務表の調整が進みやすくなります
師長に伝えるときの例文
「お忙しいところすみません。退職についてお話ししたいことがあります。家庭の事情で、いまの勤務を続けるのが難しくなりました。〇月末での退職を考えています。引き継ぎはしっかり行いますので、よろしくお願いいたします」
わたしが本音で伝えた退職理由
わたしが最初に退職の意思を伝えたのは、2024年4月ごろ、当時の師長にでした。当初は半年後の秋ごろに辞めるつもりでしたが、時期が後ろにずれて、最終的な退職は12月になりました。
伝えた理由は、言い換えをせず本音のままです。
- 子育てをしながら働き続けるのが難しいこと
- 医療業界の経営環境が厳しく、病院の赤字が続いていること
わたしは2016年に第1子を出産してから、子育てと夜勤の両立に悩んでいました。夫は船乗りで、数か月家を空けることがあります。夜勤免除を申請することはできましたが、周りへの引け目を強く感じていました。
また、勤めていた病院もずっと赤字で、数年後に病院が残っているという確信を持てませんでした。
師長からは何回か引き止められました。そのたびに「気持ちは変わらない」と伝えて、結論は変えませんでした。
本音で伝えても、退職の意思がぶれなければ辞めることはできます。言い換えるか本音で話すかに迷ったら、まずは決めたことを繰り返し伝えることを意識してみてください。
面接で退職理由を聞かれたときの答え方
転職先の面接では、前の職場を辞めた理由(転職理由)を聞かれることがよくあります。採用担当者が知りたいのは、主に次の点です。
- 同じ理由で、うちの職場もすぐに辞めてしまわないか
- 不満を人や環境のせいにしていないか
- うちの職場で何をしたいのか
答えるときの3ステップ
- 事実を短く話す:「夜勤と子育ての両立が難しくなりました」
- そこから考えたことを話す:「長く働ける働き方に変えたいと考えました」
- 応募先を選んだ理由につなげる:「日勤中心で、これまでの病棟経験を活かせる貴院を志望しました」
退職理由だけで話を終えず、志望動機につなげるのがコツです。志望動機の組み立て方は、こちらの記事にまとめています。
関連記事:看護師の転職の志望動機の書き方|職場別の例文と履歴書・面接で伝えるコツ
面接で避けたい伝え方
- 前の職場の上司やスタッフの悪口を言う
- 「なんとなく合わない」とだけ答えて理由が分からない
- 面接で話す理由と、履歴書の内容が食い違っている
なお、わたしは転職先の会社に副業で関わってから正社員になったため、正社員になるときの面談や選考はありませんでした。面接での答え方は、わたしの体験ではなく一般的なポイントとして読んでください。
【理由別】看護師の退職理由の例文
よくある退職理由ごとに、師長に伝える場合と、面接で話す場合の例文をまとめました。言葉は自分の状況に合わせて変えてください。
人間関係
- 師長に:「いまのチームの中で働き続けることに、気持ちの面で負担を感じています。環境を変えて、看護の仕事を続けたいと考えました」
- 面接で:「スタッフ同士で相談しながら看護ができる環境で働きたいと考え、転職を決めました。貴院のチーム体制に魅力を感じています」
人間関係は、面接では特定の人の話にせず「どんな環境で働きたいか」に置きかえると伝わりやすくなります。
夜勤・残業がつらい
- 師長に:「夜勤や残業が続く勤務で、体力的に続けるのが難しくなりました」
- 面接で:「生活リズムを整えて、長く看護師として働きたいと考えました。日勤の業務でも、病棟で身につけた観察力を活かしたいです」
子育て・家庭の事情
- 師長に:「子育てとの両立が難しく、いまの勤務形態を続けられない状況です」
- 面接で:「子育てと両立しながら、長く働ける職場を探しています。勤務できる時間や曜日は〇〇です」
家庭の事情は、面接では勤務できる条件を具体的に伝えると、採用側も判断しやすくなります。
ひなたの友人(看護師)は、訪問看護と外来で迷った末に、子育てがあるため、オンコール(勤務時間外の呼び出し対応)のない病院の外来を転職先に選びました。家庭の事情は、次の職場選びの軸にもなる理由です。
メンタル不調・体調不良
- 師長に:「体調を崩してしまい、いまの業務を続けるのが難しい状態です。医師とも相談しています」
- 面接で:「体調を崩したことをきっかけに働き方を見直し、いまは回復しています。無理なく長く続けられる働き方で、看護の仕事を続けたいと考えています」
体調については、次の章で詳しく書きます。
キャリアアップ・スキルアップ
- 師長に:「〇〇の分野の経験を積みたいと考えるようになりました」
- 面接で:「急性期の病棟で経験を積むなかで、〇〇の看護を専門的に学びたいと考えました。貴院の教育体制や研修制度に魅力を感じています」
キャリアアップが理由のときは、「何を学びたいか」「なぜその職場なのか」を具体的に話せると説得力が出ます。
新人・早期退職(仕事が合わない)
- 師長に:「この数か月働いてみて、いまの職場で続けていくのは難しいと判断しました」
- 面接で:「短い期間で辞めたことは反省しています。働いてみて、自分は〇〇の看護に向いていると気づきました。次の職場では長く働きたいと考えています」
新人や新卒の早期退職は、面接で理由を深く聞かれやすい傾向があります。辞めた理由と、その経験から学んだことをセットで話せるように準備しておきましょう。
メンタル不調・体調不良が退職理由のとき
心や体の不調が理由で辞めたいと考えているなら、退職理由の伝え方を考える前に、まず休むこと、医療機関を受診することを優先してください。
不調の程度によっては、すぐに退職するのではなく、休職という選択肢もあります。休職や退職の手続き、診断書が必要かどうかは病院ごとに違うため、師長や事務部門、産業医がいる職場なら産業医に確認しておくと安心です。
面接で体調のことを話す場合は、次の点を意識すると伝えやすくなります。
- いまは回復している(または治療中で、働ける状態である)ことを伝える
- 勤務できる時間や、配慮してほしいことがあれば具体的に伝える
- 病名など、言いたくないことまで細かく話す必要はない
疲れがたまっている段階の対処法は、こちらにまとめています。
関連記事:看護師の仕事に疲れたときの対処法|原因別の休み方と働き方の変え方
また、退職を申し出ても話が進まない、職場でいじめや嫌がらせを受けているといった場合は、看護部長や人事部門に相談する方法があります。職場の外では、各都道府県の労働局などにある総合労働相談コーナー(厚生労働省)に無料で相談できます。
退職理由で嘘をついてもいい?本音と建前の考え方
退職理由について「本音を言うべきか、建前でいいのか」と迷う人もいると思います。
基本的には、うそはつかないほうが安心です。たとえば、師長に「家族の転勤で引っ越す」と伝えたのに同じ地域の病院に転職すると、あとで話の食い違いが生まれます。
一方で、本音をすべて話す必要もありません。次のように考えると整理しやすくなります。
| 考え方 | 例 |
|---|---|
| うそ(避ける) | 実際にはない転居や病気を理由にする |
| 本音の一部を伝える(よい) | 理由がいくつかあるうち、伝えやすいものを話す |
| 言い換える(よい) | 「人間関係がつらい」→「チームで相談しながら働ける環境に移りたい」 |
| 本音をそのまま伝える(よい) | 「子育てとの両立が難しい」「病院の先行きに不安がある」 |
わたしの場合は、子育てとの両立と病院の経営の先行きという本音をそのまま伝えました。本音で話す場合も、職場への不満をぶつけるのではなく、自分の状況として話すと受け止めてもらいやすくなります。
よくある質問
看護師の退職理由で多いものは何ですか?
厚生労働省の白書で紹介されているデータでは、看護経験のある求職者が以前の職場を辞めた理由は、全体で「結婚」「妊娠・出産」「転居」「子育て」が上位でした。上で紹介した表も参考にしてください。
退職届の理由は「一身上の都合」でよいですか?
自分の希望で辞める場合は「一身上の都合」でかまいません。詳しい理由は、師長との面談で口頭で伝えれば足ります。
師長に本当の理由を言わないといけませんか?
すべてを話す必要はありません。ただし、あとで食い違ううそは避け、伝えやすい本音の一部を話すのがおすすめです。
面接で人間関係が退職理由だと言ってもいいですか?
言ってはいけないわけではありません。ただ、特定の人への不満として話すと印象がよくないため、「どんな環境で働きたいか」に言い換えて伝えると前向きに受け取られやすくなります。
引き止められたらどうすればいいですか?
退職を決めているなら、「ありがたいお話ですが、気持ちは変わりません」と繰り返し伝えます。わたしも何回か引き止められましたが、「気持ちは変わらない」と伝えて退職しました。
まとめ
看護師の退職理由は、伝える相手によって書き分けると話しやすくなります。
- 退職届・履歴書:「一身上の都合」でよい
- 師長:理由を1〜2つにしぼり、決めたこととして伝える。うそはつかない
- 面接:事実を短く話し、次の職場でやりたいことにつなげる
- 体調不良が理由のとき:まず休む・受診することを優先する
わたしは子育てとの両立と病院の経営の先行きという本音を、そのまま師長に伝えました。何回か引き止められても「気持ちは変わらない」と伝え続けて、退職しています。
伝え方に正解はひとつではありません。自分が納得できる言葉で、次の一歩につながる退職理由を準備してみてください。