「患者さんの話を聞くのは好きだったから、人の相談に乗る仕事をしてみたい」 「看護師の経験を活かして、同じように悩む看護師を支援したい」
そう考えて、キャリアコンサルタントという仕事が気になっている看護師の方もいると思います。
わたしは約14年、看護師として働いたあと、今はWeb関連の会社で働いています。看護師時代に好きだったのは、患者さんとの会話や、患者さんの表情・検査結果・症状から「今何が起きているか」を考えるアセスメントでした。こうした力は、看護以外の仕事でも活きると感じています。
この記事では、看護師がキャリアコンサルタントを目指すときに知っておきたい国家資格の取り方、試験の内容、費用、更新の仕組みを、厚生労働省などの公式情報をもとにまとめました。あわせて、看護師の経験の活かし方や、働ける場所も紹介します。
先に結論をお伝えすると、キャリアコンサルタントは看護師の「聞く力」や「アセスメント力」を活かしやすい資格です。ただし、資格を取っただけで仕事が見つかるとは限らないので、どこで、どう活かすかを先に考えておくことが大切です。
キャリアコンサルタントとはどんな資格?
キャリアコンサルタントは、働く人や仕事を探している人の相談に乗り、職業の選択や、働き方、能力開発について支援する専門家です。
平成28年に国家資格になった
キャリアコンサルティングを行う人材は、もともと民間資格として運用されていました。相談の質を担保し、働く人が安心して相談できる環境をつくるため、平成28年4月1日から「キャリアコンサルタント」として国家資格になりました。
※出典:特定非営利活動法人キャリアコンサルティング協議会「国家資格キャリアコンサルタント」
登録しないと「キャリアコンサルタント」と名乗れない
キャリアコンサルタントは「名称独占」の資格です。試験に合格したあと、キャリアコンサルタント名簿に登録して、はじめて「キャリアコンサルタント」と名乗ることができます。
一方で、資格がなくても、人材紹介会社などで「キャリアアドバイザー」として求職者の相談に乗る仕事はあります。この違いは、後ほど詳しく説明します。
看護師がキャリアコンサルタントになるまでの流れ
看護師がキャリアコンサルタントの資格を取得するまでの、一般的な流れは次のとおりです。
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| 1. 受験資格を満たす | 多くの人は、厚生労働大臣が認定する養成講習を修了して受験資格を得る |
| 2. 試験を受ける | 学科試験と実技試験(論述・面接)を受け、両方に合格する |
| 3. 名簿に登録する | 指定登録機関に登録して、キャリアコンサルタントを名乗れるようになる |
| 4. 5年ごとに更新する | 更新講習を受けて、登録を更新する |
受験資格
キャリアコンサルタント試験は、次のいずれかの要件を満たした人が受験できます。
- 厚生労働大臣が認定する講習の課程を修了した人
- 労働者の職業の選択、職業生活設計、職業能力開発のいずれかに関する相談について、3年以上の経験がある人
- 技能検定キャリアコンサルティング職種の学科試験または実技試験に合格した人
- 上記と同等以上の能力がある人
ここで注意したいのが、2つ目の「3年以上の経験」です。この経験は、相談の対象が「労働者(仕事を探している人も含む)」で、内容が職業の選択や能力開発に関するものであることなどが条件です。
看護師として患者さんの相談に乗った経験や、病棟で後輩の相談に乗った経験が、そのまま当てはまるとは限りません。該当するかどうかは個別に判断されるので、試験実施機関の案内で確認しましょう。看護師から目指す場合は、養成講習を修了して受験資格を得るのが一般的なルートです。
養成講習とは
養成講習は、厚生労働大臣が認定した講習で、キャリアコンサルティングの理論や、相談の進め方(カウンセリングの技法)などを学びます。講習は複数の機関が実施していて、通信(動画の視聴など)、通学、オンライン(リアルタイムの授業)を組み合わせた形があります。
受講料は講習を行う機関によって違います。厚生労働省の講習検索サイトや、各講習実施機関の公式サイトで確認してください。夜勤やシフト勤務がある看護師は、講習の日程が勤務と両立できるかも、申し込み前に確かめておきましょう。
キャリアコンサルタント試験の内容
試験は、学科試験と実技試験に分かれています。試験実施機関は、特定非営利活動法人キャリアコンサルティング協議会と、特定非営利活動法人日本キャリア開発協会の2つです。学科試験は、両機関で同じ日に同じ問題で行われます。
| 試験 | 形式 | 時間 | 合格基準 |
|---|---|---|---|
| 学科試験 | 四肢択一のマークシート(50問) | 100分 | 100点満点で70点以上 |
| 実技試験(論述) | 事例記録を読み、設問に記述で答える | 50分 | 論述と面接の合計150点満点で90点以上(それぞれに最低基準あり) |
| 実技試験(面接) | ロールプレイと口頭試問 | 20分 | 同上 |
面接のロールプレイでは、受験者がキャリアコンサルタント役になり、相談者役と面談を行います。相談者を尊重する態度で関係をつくり、相談者が自分で気づいていけるような応答ができるかが見られます。
※出典:特定非営利活動法人キャリアコンサルティング協議会「受験概要」(キャリアコンサルティング協議会の実施分。日本キャリア開発協会の面接の進め方は、同協会の案内を確認してください)
患者さんの話を聞き、何に困っているかを一緒に整理する看護師の経験は、このロールプレイと考え方が近い部分があります。ただ、看護の問診とキャリアの面談では、ゴールが違います。キャリアコンサルティングでは、相談者が自分で答えを見つけられるよう支援することが重視されるので、「すぐに解決策を伝える」くせがある人は、練習で慣れていく必要があります。
資格の取得にかかる費用
資格を取るまでには、主に次の費用がかかります。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 養成講習の受講料 | 講習実施機関によって異なる |
| 学科試験の受験料 | 8,900円 |
| 実技試験の受験料 | 29,900円 |
| 登録手数料 | 8,000円(別途、登録免許税9,000円) |
受講料の支払い方法や、受講料の補助・支援の制度があるかは、講習実施機関の公式サイトで確認しましょう。
資格を取ったあとの更新
キャリアコンサルタントの登録を続けるには、5年ごとに更新を受ける必要があります。更新には、次の講習を受講することが求められます。
- 知識を維持するための講習(知識講習):8時間以上
- 技能を維持するための講習(技能講習):30時間以上(一部免除あり)
※出典:厚生労働省「キャリアコンサルタントとして活動している方へ」
資格を取ったあとも、学び続ける時間と費用がかかることは、あらかじめ知っておきましょう。
看護師の経験はキャリアコンサルタントの仕事でどう活きる?
看護師の仕事で身につく力には、キャリアコンサルタントの仕事に活かせるものがあります。
| 看護師の経験 | キャリアコンサルタントの仕事での活かし方 |
|---|---|
| 患者さんの話を聞く力(傾聴) | 相談者の話を最後まで聞き、気持ちを受け止める |
| アセスメント力 | 相談者の状況や悩みの背景を整理し、課題を見立てる |
| 多職種との連携 | 企業の人事担当者や、ほかの支援機関と協力する |
| 医療の現場を知っていること | 医療職のリアルな悩みを理解し、相談に乗れる |
| 段取り力 | 面談や支援の計画を立てて進める |
わたしは今、看護師とは違う仕事をしていますが、アセスメント力は課題を分析する仕事に活きていて、考え方が似ていると感じています。段取りの力も、仕事を進める力としてほめてもらうことがあります。看護師の経験は、医療の外でも役に立つ場面があります。
特に、看護師や医療職のキャリア支援をしたい人にとっては、現場を知っていることが大きな強みになります。夜勤や人間関係、子育てとの両立など、看護師が抱えやすい悩みを、自分の経験として理解できるからです。
看護師がキャリアコンサルタントとして働ける場所
キャリアコンサルタントの資格を活かせる場所には、次のようなものがあります。
| 働く場所 | 仕事内容の例 |
|---|---|
| 人材紹介会社(看護師専門など) | 転職を考える看護師の相談に乗り、求人を紹介する |
| 企業の人事部門 | 組織の中で、社員のキャリア面談や研修の企画を担当する |
| 公的な就労支援機関 | 仕事を探している人の相談に乗る |
| 学校・大学 | 学生の就職の相談に乗る |
| 病院の看護部・人材育成部門 | 看護職員のキャリア面談や、研修を担当する |
| 独立・副業 | 個人でキャリア相談のサービスを提供する |
求人は、勤め先によって仕事内容や雇用形態、年収が大きく違います。正社員だけでなく、非常勤や業務委託の求人もあるので、条件をよく確認しましょう。
「看護師を続けながら資格を活かす」という選択肢
キャリアコンサルタントの資格は、看護師を辞めなくても活かせます。病院の看護部で後輩の育成やキャリア面談に関わったり、副業で看護師の相談に乗ったりする方法もあります。
わたし自身も、看護師を常勤で続けながら副業を始め、看護師以外の仕事を少しずつ試してから働き方を変えました。いきなり看護師を辞めるのではなく、続けながら試すことで、自分に合うかどうかを確かめやすくなります。
関連記事:看護師におすすめの副業|資格を活かす仕事・在宅でできる仕事と始める前の注意点
資格なしで働く「キャリアアドバイザー」との違い
人材紹介会社では、資格がなくても「キャリアアドバイザー」として、求職者の相談に乗る仕事があります。看護師の経験を活かして、看護師専門の転職支援の会社でアドバイザーとして働く人もいます。
| 項目 | キャリアコンサルタント | キャリアアドバイザー |
|---|---|---|
| 資格 | 国家資格(登録が必要) | 資格は不要(職種名) |
| 名乗れる人 | 登録した人だけ | 会社が決める |
| 主な仕事 | 職業選択や能力開発の相談・支援 | 求職者と求人のマッチング、転職の支援 |
キャリアアドバイザーとして働きながら、実務経験を積んでキャリアコンサルタントの資格を目指す人もいます。どちらの道を選ぶかは、「相談支援を専門にしたいのか」「転職の支援をしたいのか」で考えると整理しやすくなります。
キャリアコンサルタントを目指すメリット・デメリット
メリット
- 看護師の経験や聞く力を、医療とは違う形で活かせる
- 国家資格なので、相談支援の専門性を示しやすい
- 体力の負担が少ない仕事を選びやすい
- 看護師を続けながら、今の職場での役割や副業で活かす道もある
デメリット
- 養成講習や試験に、時間と費用がかかる
- 資格を取っても、すぐに希望の仕事が見つかるとは限らない
- 5年ごとの更新で、学び続ける必要がある
- 看護師から完全に転職すると、年収が変わる可能性がある
看護師のキャリアコンサルタントに関するよくある質問
看護師の経験だけで受験資格を満たせますか?
看護師として患者さんの相談に乗った経験が、そのまま受験資格の「3年以上の経験」にあたるとは限りません。相談の対象や内容に条件があり、個別に判断されます。多くの人は、養成講習を修了して受験資格を得ています。
夜勤があっても資格の勉強はできますか?
養成講習には、通信やオンラインを組み合わせた講習もあります。勤務と両立できる日程か、申し込み前に確認しましょう。わたしは常勤の看護師と育児を両立しながら、朝4時ごろに起きて副業や勉強の時間を確保していました。人によって合う時間帯は違いますが、まとまった時間を先に決めておくと続けやすくなります。
キャリアコンサルタントに相談するのと、資格を取るのとではどちらがいいですか?
今の働き方に悩んでいて、まず自分の考えを整理したいなら、資格を取る前に、キャリア相談を受けてみるのもひとつの方法です。相談する側の立場を経験すると、キャリアコンサルタントの仕事のイメージもつかみやすくなります。
看護師以外の資格も比べたいです
看護師が取れる資格は、キャリアコンサルタント以外にもたくさんあります。続ける人向け、看護師以外も考える人向けに分けて、こちらの記事で紹介しています。
関連記事:看護師におすすめの資格|続ける人向け・看護師以外も考える人向けに分けて紹介
まとめ:看護師の経験は、キャリア支援でも活かせる
看護師がキャリアコンサルタントを目指すときのポイントをまとめます。
- キャリアコンサルタントは、平成28年4月に国家資格になった、名称独占の資格
- 看護師から目指すなら、養成講習を修了して受験資格を得るのが一般的
- 試験は学科と実技(論述・面接)。受験料は学科8,900円、実技29,900円
- 登録後も、5年ごとに更新講習を受けて更新する必要がある
- 看護師の聞く力やアセスメント力は、相談支援の仕事で活かせる
資格を取ったあとに、どこでどう活かすかを考えておくと、学ぶ時間を無駄にしにくくなります。看護師以外の仕事全体を比べたい人は、こちらも参考にしてください。