「病棟とは違う形で、患者さんにじっくり関わりたい」 「訪問看護って、一人で判断するのが大変そう」
訪問看護に興味はあっても、病院とは働き方が大きく違うため、不安を感じている人も多いのではないでしょうか。
この記事では、病院で約14年看護師として働いた元看護師のわたしが、訪問看護師について次のことをまとめます。
- 訪問看護師とは何か、病棟看護との違い
- 訪問看護の仕組み(医療保険と介護保険、主治医の指示書)
- 仕事内容と1日の流れ
- 給料の考え方と、メリット・デメリット
- 訪問看護師になるには、向いている人、ステーションの選び方
訪問看護師とは|利用者さんの自宅で看護を行う看護師
訪問看護師とは、病気や障がいがある人の自宅や暮らしの場を訪問して、看護を行う看護師のことです。主な勤務先は訪問看護ステーションで、病院や診療所の訪問看護部門で働く人もいます。
利用者さんは、高齢の人だけではありません。在宅で医療的ケアが必要な子どもや、精神疾患のある人、終末期を自宅で過ごしたい人など、年代も状態もさまざまです。
病棟看護との違い
| 項目 | 訪問看護 | 病棟看護 |
|---|---|---|
| 看護の場 | 利用者さんの自宅など | 病院の病棟 |
| 関わり方 | 1回あたり30分〜1時間程度の訪問で、計画にもとづいて看護を行う | 24時間、交代制で入院患者さんを看る |
| 判断 | 基本的に1人で訪問し、その場で状態を判断する | ほかの看護師や医師がすぐ近くにいる |
| 連携する人 | 主治医、ケアマネジャー、ヘルパー、リハビリ職、家族など | 院内の医師、看護師、多職種 |
| 勤務 | 日勤が中心。オンコール(夜間・休日の電話対応)がある職場も多い | 夜勤やシフト勤務がある |
訪問看護の仕組み|医療保険と介護保険、主治医の指示書
訪問看護を始めるには、主治医が訪問看護の必要性を認め、「訪問看護指示書」を交付することが必要です。訪問看護ステーションは、この指示書にもとづいて訪問看護計画書を作り、計画書や報告書を主治医に提出します。訪問看護師は、医師の指示の範囲で医療的なケアを行う仕組みになっているということ。
費用を支払う仕組みは、医療保険と介護保険の2種類です。要介護・要支援の認定を受けている人は原則として介護保険が優先ですが、末期の悪性腫瘍などの厚生労働大臣が定める疾病の人や、病状の急な悪化などで主治医から特別訪問看護指示書が出た場合などは、医療保険での訪問になります。
どちらの保険かによって訪問の回数や時間のルールが変わるため、働き始めると、こうした制度の知識も必要になってきます。
参考:近畿厚生局「医療保険における訪問看護の概要」(PDF)
訪問看護師の仕事内容
訪問看護師の仕事は、病気の管理から日常生活の支援、家族へのサポートまで幅広いのが特徴です。
| 仕事 | 主な内容 |
|---|---|
| 健康状態の観察 | バイタルサインの測定、病状や体調の変化の確認 |
| 医療的ケア | 主治医の指示にもとづく点滴、褥瘡の処置、カテーテルや在宅酸素の管理など |
| 日常生活の支援 | 清潔ケア(入浴・清拭)、排泄のケア、食事や栄養の相談 |
| 服薬の管理 | 薬の飲み忘れや飲み方の確認、副作用の観察 |
| リハビリ・療養指導 | 体を動かす練習や、自宅で安全に過ごすための助言 |
| 終末期のケア | 痛みなどの症状の緩和、自宅での看取りの支援 |
| 家族への支援 | 介護の方法の説明、介護をする家族の相談 |
| 連携・記録 | 主治医やケアマネジャーへの報告、訪問の記録や書類の作成 |
訪問の時間だけでなく、記録や書類の作成、関係する人との連絡調整も大切な仕事です。
訪問看護師の1日の流れ(例)
| 時間 | 仕事の例 |
|---|---|
| 8:30 | 出勤。ミーティングで利用者さんの情報を共有し、その日の訪問先を確認 |
| 9:00 | 1件目の訪問(バイタル測定、清潔ケア) |
| 10:30 | 2件目の訪問(点滴、服薬の確認) |
| 12:00 | ステーションに戻り昼休憩 |
| 13:30 | 3件目の訪問(褥瘡の処置、家族への介護指導) |
| 15:00 | 4件目の訪問(リハビリ、状態の観察) |
| 16:30 | ステーションで記録、主治医やケアマネジャーへの報告 |
| 17:30 | 退勤(オンコール当番の日は、夜間の電話に対応) |
1日に訪問する件数は、ステーションや利用者さんの状態によって変わります。移動には車や自転車、バイクを使うことが多く、地域によっては運転免許が必要です。
訪問看護師の給料の考え方
訪問看護師の給与は、ステーションを運営する法人の給与体系で決まります。夜勤はありませんが、オンコール手当や訪問件数に応じた手当がつく職場もあります。
求人を比べるときは、次の点を確認しましょう。
- オンコール手当の仕組み:待機1回あたりの手当と、実際に出動したときの手当が別になっていることがあります
- 訪問件数の目安とインセンティブ:件数に応じて手当が増える職場もあれば、件数のノルマがある職場もあります
- 夜勤手当がなくなる影響:病棟で夜勤をしていた人は、その分の手当がなくなります
- 移動手段の費用:自家用車を使う場合のガソリン代や、車両の貸し出しの有無
インターネットでは「訪問看護師で年収1000万円は可能?」という質問も見られます。管理者として経営に関わるなど一部の働き方では高い収入を得る人もいるかもしれませんが、一般的な求人で目安になる金額ではありません。固定給と手当の内訳を確認して判断しましょう。
関連記事:看護師が夜勤なしで働くと年収はどう変わる?夜勤手当の差と日勤のみの職場
訪問看護師として働くメリット・デメリット
メリット
- 一人ひとりにじっくり関われる:訪問の時間は、その利用者さんだけに向き合えます
- 暮らしを支えるやりがいがある:「家で過ごしたい」という願いを支え、生活の中での変化を見守れます
- 夜勤がない:日勤が中心で、生活リズムを整えやすくなります
- 看護の力が幅広く身につく:観察・判断・生活支援・家族支援など、総合的な力が求められます
- 直行直帰やパート勤務ができる職場もある:働き方の選択肢が比較的多い分野です
デメリット
- 1人で判断する場面が多い:訪問先にはほかの看護師がいないため、責任を重く感じることがあります
- オンコールの負担:夜間や休日に電話がかかってくる可能性があり、気が休まらないと感じる人もいます
- 移動の負担:天候に左右されたり、運転に慣れていないと負担になったりします
- 利用者さんの家庭に入るむずかしさ:家庭ごとのルールや、家族との関係に気をつかう場面があります
訪問看護師が「やってはいけないこと」
「訪問看護師がやってはいけないことは?」という疑問も多く見られます。代表的なものを整理しておきましょう。
- 主治医の指示がない医療処置:医療的なケアは、訪問看護指示書などにもとづいて行います
- 利用者さんや家族からの金品の受け取り:多くのステーションでは、お礼の品やお金を受け取らないルールを設けています
- 個人情報の持ち出しや漏えい:訪問先で見聞きしたことや、記録の扱いには十分な注意が必要です
- 家庭の物を勝手に使う・動かす:利用者さんの家では、事前に了解を得てから行動するのが基本です
細かいルールはステーションによって違います。入職したら、マニュアルや先輩の動き方を確認しておくと安心です。
訪問看護師になるには
必要な資格
訪問看護師として働くには、看護師(または保健師・准看護師)の免許が必要です。そのほかに必須の資格はありませんが、移動に車を使う地域では運転免許を求められることも多いでしょう。
何年目からなれる?
法律で決まった年数はなく、新卒を受け入れるステーションもあります。ただ、訪問先では1人で判断する場面が多いため、病院で数年の臨床経験を積んでから転職する人が多い傾向にあります。経験が浅い場合は、同行訪問の期間が長いなど、教育体制が整ったステーションを選ぶと安心でしょう。
あると役立つ経験・資格
- 内科・外科などの病棟での経験(幅広い疾患の観察や処置に活かせる)
- 急変時の対応や、点滴・褥瘡の処置などの基本的な看護技術
- 在宅ケアや緩和ケアなどの分野の認定看護師(キャリアアップを考える場合)
- ケアマネジャーの資格(介護保険の仕組みの理解に役立つ)
関連記事:看護師におすすめの資格|続ける人向け・看護師以外も考える人向けに分けて紹介
志望動機で伝えたいこと
訪問看護ステーションへの応募では、「なぜ在宅の看護をしたいのか」を具体的に伝えることが大切です。職場別の例文は、次の記事を参考にしてください。
関連記事:看護師の転職の志望動機の書き方|職場別の例文と履歴書・面接で伝えるコツ
訪問看護師に向いている人・向いていない人
向いている人
- 利用者さんの生活に寄り添い、じっくり関わりたい人
- 状況を見て、自分で考えて動ける人
- 主治医やケアマネジャー、家族など、多くの人と連携するのが苦にならない人
- 家庭ごとの違いを受け入れ、柔軟に対応できる人
向いていない人
- すぐ近くに相談できる人がいないと不安が強い人
- 高度な医療機器を使う急性期の看護を続けたい人
- オンコールなど、勤務時間外の対応にどうしても抵抗がある人
子育て中の人は、オンコールの有無や回数が両立のしやすさに大きく関わります。働き方の選び方は、こちらの記事でもまとめています。
関連記事:看護師が子育てと両立する方法|使える制度と働き方の選び方を元看護師が解説
訪問看護ステーションを選ぶときのチェックリスト
訪問看護ステーションは小規模な事業所が多く、職場ごとの違いが大きいのが特徴です。応募する前に、次の点を確認しておきましょう。
- ☐ 看護職員の人数と、相談しやすい体制があるか
- ☐ 同行訪問などの教育期間と、1人で訪問するまでの流れ
- ☐ 1日の訪問件数の目安と、件数のノルマの有無
- ☐ オンコールの回数、手当、夜間に出動する頻度
- ☐ 移動手段(車・自転車・バイク)と、車両の貸し出しの有無
- ☐ 利用者さんの層(高齢者が中心か、小児・精神・終末期などが多いか)
- ☐ 記録の方法(タブレットなどで訪問先から入力できるか)
訪問看護ステーションは、介護保険の基準で看護職員を常勤換算で2.5人以上置くことが定められています。小規模なところも多いため、人数が少ない職場では、休みの取りやすさや急な欠勤時の対応も聞いておくと安心です。
関連記事:看護師が転職で失敗しないために|よくある失敗例と転職前に確認したいこと
よくある質問
Q. 訪問看護師は何年目からなれますか? A. 法律で決まった年数はなく、新卒を受け入れるステーションもあります。ただ、1人で判断する場面が多いため、病院で数年の経験を積んでから転職する人が多い傾向にあります。経験が浅い場合は、教育体制が整ったステーションを選ぶのがおすすめです。
Q. 訪問看護師で年収1000万円は可能ですか? A. 一般的な求人で目安になる金額ではありません。管理者として経営に関わるなど、一部の働き方で高い収入を得る人もいるかもしれませんが、まずは固定給とオンコール手当などの内訳を確認して比べましょう。
Q. 看護師1人で訪問看護ステーションを開業できますか? A. 介護保険の指定を受ける訪問看護ステーションには、看護職員を常勤換算で2.5人以上置くなどの基準があります。そのため、看護師1人だけで開業するのは基本的に難しいと考えておきましょう。
Q. 訪問看護師は何歳まで働けますか? A. 年齢の決まりはなく、病院での経験を活かして中高年になってから訪問看護に移る人もいます。体力面では移動の負担があるため、移動手段や訪問件数を確認しておくと安心です。
Q. 訪問看護師が少ない理由は何ですか? A. 1人で訪問する責任の重さや、オンコールの負担、移動の大変さなどから、ハードルが高いと感じる人がいることが理由の一つと考えられます。一方で、教育体制やオンコールの負担を軽くする工夫をしているステーションもあります。
まとめ
- 訪問看護師は、利用者さんの自宅などを訪問して看護を行う看護師
- 主治医の訪問看護指示書にもとづいて、医療的ケアや生活の支援を行う
- 要介護認定を受けている人は原則介護保険、一部の病気や急な悪化のときなどは医療保険で訪問する
- 1人で判断する場面やオンコールの負担がある一方、一人ひとりにじっくり関われるやりがいがある
- ステーションを選ぶときは、教育体制やオンコールの条件、看護職員の人数を確認する
訪問看護は、病院とは違う形で「その人らしい暮らし」を支えられる仕事です。不安な点は見学や面接で一つずつ確かめながら、自分に合うステーションを探してみてください。
