「毎日、仕事に行くのがつらい」 「新人看護師なのに、もう辞めたいと思ってしまう」
入職してしばらくたち、そんな気持ちを抱えていませんか。
わたしは看護学校を卒業してから約14年、新卒で入った同じ病院で看護師として働き、2024年12月に退職しました。転職はしていないので、新卒から辞めるまで、その病院がわたしにとっての「全部」でした。
この記事では、新人看護師が辞めたいと感じやすい理由と時期、辞める前に考えておきたいこと、相談先、そして「続ける場合」と「辞める場合」それぞれの選択肢をまとめました。
先に結論を書くと、次の順番で考えるのがおすすめです。
- 心と体に不調のサインが出ていないかを確かめる(出ているなら、決断より先に休む・受診する)
- 辞めたい理由が「慣れていないこと」なのか「職場の環境」なのかを分ける
- ひとりで抱えず、職場の内と外の相談先に話す
- そのうえで、続ける・部署を変える・病院を変える・看護師以外を考えるのどれにするかを選ぶ
看護師を辞めたいときの全体の考え方は、こちらの記事にまとめています。この記事では、新人・1年目ならではの悩みに絞って深掘りします。
関連記事:看護師を辞めたい人へ|14年働いた元看護師が「続ける・辞める」の判断軸を解説
新人看護師が辞めたいと思うのは珍しいことではない
日本看護協会の調査では、2024年度に病院へ新卒で採用された看護職員のうち、8.4%が年度内に離職していました。前年度より0.4ポイント低いものの、およそ12人に1人の割合です。
また、新卒の離職者がいた病院の看護管理者に「主な退職理由」を5つまで選んでもらった結果では、次の項目が上位でした。
| 看護管理者が考える新卒看護師の主な退職理由 | 割合 |
|---|---|
| 健康上の理由(精神的疾患) | 54.6% |
| 自分の看護職員としての適性への不安 | 46.6% |
| 自分の看護実践能力への不安 | 44.2% |
| 上司・同僚との人間関係 | 27.0% |
| 他施設への関心・転職 | 23.0% |
※出典:日本看護協会「2025年 病院看護実態調査」(2026年3月公表。労働政策研究・研修機構の紹介記事)
この数字は、実際に辞めた人についての、病院側から見た理由です。それでも「心の不調」や「自分は向いていないのでは」という不安が上位にあることから、新人の時期に精神的な負担が重なりやすいことがうかがえます。
辞めたいと感じるのは、あなたの努力が足りないからとは限りません。まずは「同じように悩む人は少なくない」と知っておいてください。
新人看護師が辞めたいと感じる主な理由
1年目の悩みは、ひとつではなく、いくつかが重なって大きくなることが多いです。よくあるものを整理します。
覚えることが多く、仕事が回らない
看護技術、病棟のルール、薬の名前、記録の書き方、医師への報告の仕方など、入職直後は覚えることがとても多い時期です。勤務時間内に業務が終わらず、残業や、帰宅後の勉強で休む時間が削られていく人もいます。
「同期はできているのに、自分だけ遅れている」と感じると、自信をなくしやすくなります。
先輩やプリセプターとの関係がつらい
プリセプターとは、新人を一対一で指導する担当の先輩のことです。指導の仕方が厳しい、質問しにくい、先輩によって言うことが違う、といった人間関係の悩みは、新人のうちは特につらく感じます。
忙しい現場では、先輩も余裕がないことがあります。ただ、人格を否定するような言葉や、無視が続くような状況は「指導」の範囲を超えています。そうした場合は、我慢せずに師長や看護部に相談してください。
夜勤が始まるプレッシャー
夜勤が始まる時期は、病院や病棟によって違います。日勤に慣れてきたころに夜勤が加わると、生活リズムが大きく変わり、体力的にも精神的にも負担が増えます。少ない人数で患者さんを見る緊張感もあります。
わたしは病棟にいたころ3交代制で、多いときは月8回の夜勤に加えて、早番・遅番もありました。仮眠をとっても異常な眠気に襲われることがあり、命を預かる立場として危機感を抱いていました。夜勤のつらさには、慣れで軽くなる部分と、体質や生活との相性のように慣れだけでは解決しにくい部分があります。
インシデントやミスへの怖さ
インシデントとは、患者さんに影響が出る前に気づいた間違いや、影響が小さかった出来事のことです。新人のうちは、誤薬などのミスを起こしてしまったり、「次は大きな事故につながるかも」と怖くなったりして、看護師を続ける自信をなくす人がいます。
インシデントレポートは、個人を責めるためではなく、同じことが起きない仕組みをつくるためのものです。振り返ってみると、確認の手順や業務量など、自分ひとりの問題ではない原因が見つかることもあります。
関連記事:看護師が誤薬で辞めたいと感じたら|インシデント後の気持ちの整理と立ち直り方
理想の看護と現場のギャップ
「患者さんとゆっくり話せる看護師になりたかった」のに、実際は業務に追われて余裕がない。学校で学んだことと、病院の現場の違いに戸惑うことを、リアリティショックと呼ぶこともあります。
わたし自身、患者さんとの会話や、表情・検査結果・症状から「今何が起きているか」をアセスメントすることが好きでした。好きな部分があっても、それを感じられる余裕がない時期はあるものです。
新人看護師が辞めたいと感じやすい時期
辞めたい気持ちには波があり、次のような節目で強くなりやすいと言われます。時期は病院の教育スケジュールによって変わるので、目安として読んでください。
| 時期 | 起きやすいこと |
|---|---|
| 入職〜3か月ごろ | 覚えることの多さ、慣れない環境、先輩との関係に疲れが出る |
| 半年ごろ | 夜勤や受け持ち患者さんが増え、責任の重さを感じる |
| 1年目の冬〜年度末 | 2年目からの役割や、このまま続けるかに迷いが出る |
「毎日辞めたい」と思う日が続くときも、それがいつごろから始まったのかを振り返ると、きっかけが見えることがあります。たとえば「夜勤が始まってから」なら働き方の問題、「特定の先輩と組む日だけ」なら人間関係の問題、というように、対処の方向が変わってきます。
辞める前に考えておきたい4つのこと
1. 心と体のサインが出ていないか
次のような状態が続いているなら、辞めるかどうかを決める前に、まず休むことと受診することを優先してください。
- 眠れない、または朝どうしても起き上がれない
- 食欲がない、体重が急に変わった
- 出勤前に涙が出る、動悸や吐き気がある
- 休日も仕事のことが頭から離れず、何も楽しめない
心療内科や精神科、職場の産業医に相談すると、休職という選択肢を含めて考えられます。判断力が落ちているときに、大きな決断をひとりでする必要はありません。疲れが続いているときの休み方は、こちらの記事も参考にしてください。
関連記事:看護師の仕事に疲れたときの対処法|原因別の休み方と働き方の変え方
2. 「慣れていないだけ」か「職場が合わない」か
新人のつらさには、時間がたてば少しずつ軽くなるものと、環境が変わらない限り続くものがあります。
| 時間とともに変わりやすいこと | 環境を変えないと変わりにくいこと |
|---|---|
| 技術や手順に慣れていない | 指導の範囲を超えた言動が続いている |
| 病棟のルールを覚えきれていない | 残業や夜勤の回数が極端に多い |
| 記録や報告に時間がかかる | 相談できる人がひとりもいない |
左側が中心なら、教育担当と相談しながら続けることで楽になる可能性があります。右側が中心なら、部署異動や転職も検討してよいサインです。看護の仕事そのものが合わないのか、職場が合わないのかを見分ける方法は、こちらにまとめています。
関連記事:看護師に向いてないと感じたら|「仕事」か「職場」かを見分けて次の一手を決める
3. 奨学金や契約の条件
病院の奨学金を借りて入職した場合、一定期間働かずに辞めると、残りを返済する条件になっていることがあります(いわゆる「お礼奉公」)。条件は病院ごとに違うので、契約書を確認するか、事務部門に問い合わせてください。返済や契約の扱いに不安がある場合は、ひとりで判断せず、後で紹介する労働相談の窓口も使えます。
4. 辞めたあとの生活
次の職場が決まらないまま辞めると、収入が途切れる期間ができます。生活費の見通し、健康保険や年金の切り替えなども、辞める前に確認しておくと安心です。
新人看護師の主な相談先
わたしは辞めたいと悩み始めてから退職するまでの約7〜8年、誰にも相談しませんでした。ひとりで考える時間が必要なこともありますが、新人のうちは、相談すること自体が状況を変えるきっかけになることもあります。職場の内と外、両方の相談先を知っておいてください。
| 相談先 | 相談しやすい内容 |
|---|---|
| プリセプター・教育担当の先輩 | 業務の覚え方、技術の不安、1日の流れ |
| 師長・主任 | 人間関係、勤務や夜勤の調整、部署異動、退職の相談 |
| 看護部・教育担当部署 | 病棟の中では言いにくいこと、指導方法の悩み |
| 産業医・職場の健康相談 | 眠れない、気持ちが落ち込むなど心身の不調 |
| 同期・学校時代の友人や先生 | 気持ちを話して整理したいとき |
| こころの耳(厚生労働省) | 働く人のメンタルヘルスの相談。電話・SNS・メールで匿名・無料 |
| 総合労働相談コーナー | パワハラ、いじめ・嫌がらせ、退職をめぐるトラブルなど労働問題全般 |
「こころの耳」は、厚生労働省の働く人のメンタルヘルス・ポータルサイトで、電話・SNS・メールの相談窓口が案内されています。
※出典:厚生労働省「こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト」
総合労働相談コーナーは、各都道府県労働局や全国の労働基準監督署内などに設置されていて、予約不要・無料で相談できます。
※出典:厚生労働省「総合労働相談コーナーのご案内」
職場の人に話しにくいなら、まずは外の窓口から始めても大丈夫です。インターネットの体験談や掲示板は気持ちが楽になることもありますが、自分の状況に当てはまるとは限らないので、最終的な判断は信頼できる人と話して決めてください。
続ける場合にできること
「もう少しがんばってみたい」と思えるなら、次のような工夫で負担を軽くできることがあります。
分からないことを書き出して、質問の時間をもらう
覚えられないことをメモに書き出し、教育担当に「この時間に質問させてください」とお願いすると、忙しい現場でも聞きやすくなります。何が分かっていないかがはっきりすると、不安も小さくなります。
できたことに目を向ける
新人のうちは、できなかったことばかりが目につきます。1日の終わりに「今日できたこと」をひとつ書くだけでも、自分の成長に気づきやすくなります。
夜勤や勤務の調整を相談する
夜勤がつらいときは、回数や組み合わせを師長に相談できることがあります。わたしは出産後、夜勤免除を申請したり、夫の休暇中に夜勤に入ったりして調整していました。状況は新人とは違いますが、「勤務は相談して変えられることがある」と知っておくと、選択肢が広がります。
部署異動を相談する
病院を辞めなくても、診療科や部署が変わると、仕事の進め方や人間関係が大きく変わることがあります。わたしも同じ病院の中で、神経内科、呼吸器内科・呼吸器外科がメインの一般病棟、外来と部署を移りながら働きました。急性期のスピードが合わない、特定の人間関係がつらいといった場合は、異動の希望を出せるか師長に聞いてみてください。
辞める場合の選択肢
続けるのが難しいと判断したら、辞めることも選択肢のひとつです。看護師の資格は、辞めてもなくなりません。
別の病院や病棟で働く
教育体制や夜勤の回数、病棟の雰囲気は病院ごとに違います。新卒で入った病院が合わなかっただけで、別の環境なら続けられる人もいます。見学や面接で、新人や経験の浅い人への教育・フォローの仕組みを確かめておくと安心です。
クリニックや日勤中心の職場で働く
夜勤がつらい場合は、クリニックや健診、日勤中心の職場もあります。ただ、少人数の職場では、ひとりで判断する場面が多いこともあります。自分が何を優先したいかを整理してから選ぶのがおすすめです。
看護師以外の仕事を考える
看護の仕事そのものが合わないと感じるなら、看護師以外の道もあります。看護師の経験は、医療の現場の外でも活かせます。わたしは今、一般企業でSEOコンサルタントとして働いていますが、患者さんをアセスメントする考え方は課題分析に、段取りの力はプロジェクトを進める力に役立っています。
次の職場探しで気をつけたいこと
1年目で辞めると、面接で「なぜ短期間で辞めたのか」を聞かれることが多いです。前の職場の悪口ではなく、「何が合わなかったか」「次はどう働きたいか」を自分の言葉で話せるように準備しておきましょう。
求人を探すときに、看護師専門の転職エージェントに相談する方法もあります。わたしは転職サービスを使ったことがありませんが、ひなたの友人(看護師)は、いくつかのエージェントに登録して転職先を決めました。担当者との相性が大事だと感じたこと、いろいろな職場の話を聞けたことがよかったと話していました。
転職でよくある失敗や、転職前に確認したいことは、こちらの記事にまとめています。
関連記事:看護師が転職で失敗しないために|よくある失敗例と転職前に確認したいこと
辞めると決めたら、まずは師長に伝えます。退職届の書き方や伝え方は看護師の退職届の書き方|テンプレートと渡し方、円満に辞める手順を参考にしてください。
よくある質問
Q. 新人看護師が辞めたいと思うのは甘えですか? A. 甘えとは限りません。新卒で入った看護職員のうち、2024年度内に辞めた人は8.4%います。大切なのは、辞めたい理由を整理し、心身の状態を確かめたうえで、自分に合う次の一歩を選ぶことです。
Q. 入職1か月で辞めたいのですが、可能ですか? A. 体調を崩しているなど続けるのが難しい事情があれば、早い時期に辞める人もいます。ただ、入職直後は誰でも慣れない時期です。まずは師長や教育担当に今の状況を話し、退職の手続きや奨学金の条件も確認したうえで決めてください。心身の不調があるなら、受診を先にしてください。
Q. 毎日辞めたいと思ってしまいます。どうすればいいですか? A. 毎日つらさが続いているなら、心と体が疲れているサインかもしれません。眠れない、食欲がないなどの症状があれば、まず休む・受診することを優先してください。そのうえで、つらさのきっかけ(夜勤、特定の人、業務量など)を書き出し、相談先に話してみてください。
Q. 1年は続けたほうがいいですか? A. 「1年続けないといけない」という決まりはありません。続けることで身につく経験もありますが、心身を壊してまで続ける必要はありません。続ける・辞めるのどちらでも、理由を自分で説明できる状態にしておくと、次の職場選びで迷いにくくなります。
まとめ:最初の職場がすべてではない
- 新卒看護職員の離職率は2024年度で8.4%。辞めたいと思うのは珍しいことではない
- 覚えること、先輩との関係、夜勤の開始、インシデントなど、新人の悩みは重なりやすい
- 心身のサインが出ているなら、決断より先に休む・受診する
- 「慣れていないだけ」か「職場が合わない」かを分けて考える
- 職場の内と外に相談先がある。ひとりで抱えない
- 続けるなら部署異動や勤務の相談、辞めるなら別の病院・日勤中心の職場・看護師以外の道がある
わたしは新卒から辞めるまで、ひとつの病院しか知りませんでした。外に出て初めて、自分がどれだけ世間知らずだったかに気づきました。今いる職場だけが、看護師として働く場所のすべてではありません。
悩んでいるなら、小さくても行動してみてください。行動して後悔することもあるかもしれませんが、残っても後悔することはあります。どちらを選んでも、自分が選んだ道を正解にするつもりで、一歩を踏み出してみてください。
